コンテナ建築は、サステナブルか
現在、ありとあらゆる業界・事業に対して、「それはサステナブルか?」という観点からの見直しが迫られています。
世界各国で起きている異常気象や、それにより毎年のように引き起こされる自然災害は、否が応でも私たちにその事実を突きつけ、一般市民の生活レベルから国の政策決定に至るまで、ありとあらゆる立場の人々が共通認識として持ち、変えていくことでしかこの地球を持続可能な状態に戻すことはできないでしょう。
一般社団法人 日本建設業連合会によれば、建設業界は、日本国内において全産業の約4割の資源を利用し、約2割の廃棄物を排出しています。これらを削減していくことは、直接的に温室効果ガスの削減につながり、ひいてはサステナブルな社会・循環型社会の実現につながります。
目次
サステナブルな建築工法・モジュール建築
モジュール建築の意味
コンテナの話の前に、まずモジュール建築の話をしたいと思います。
モジュール建築の業界団体最大手であるModular Building Instituteによると、モジュール建築とは、
【制御された工場条件下で、同じ材料を使用し、同じ基準に従って設計された建物をオフサイトで建設し、現場で組み立てるプロセス】
とされています。つまり、予め工場で規格化された部材を使用して建築物を組み立てる工法のことを総称してモジュール建築と呼びます。
モジュール工法のメリットとは?コスト削減は可能?
モジュール建築は従来工法に比べ確かにコストを節約できますが、それが主な利点ではありません。
モジュール建築の主な利点は、時間の節約と投資収益率の向上です。モジュール工法により、現場の準備と同時に工場での組み立てが可能になるため、構造物の構築にかかる合計時間を大幅に短縮できます。多くの場合、現場の準備が整うまでに (基礎の整地、配管の設置、コンクリートの流し込みなど)、工場で組み立てられたモジュールを配置する準備が整います。たとえば、モジュール式に建てられたホテルは、従来の方法で建てられたホテルよりも 30% ~ 50% 早く開業し、収益を上げ始めることができます。
その他の利点としては、労働者の安全性の向上、生産性の向上、スケジュールの確実性の向上 (計画変更による遅れや天候による遅延は、モジュール建築では大幅に減少されます)、およびコスト予測性の向上などが挙げられます。
モジュール建築はサステナブルか
モジュール建築は、いくつかの理由から、従来の工法よりもサステナブルな工法と考えられています。
- 再利用性。モジュール式の建物は分解でき、モジュールは新しい用途のために再配置または改修できるため、原材料の需要が減り、新しいニーズを満たすために使われるエネルギー量が最小限に抑えられます。
- 材料の無駄が少ない。工場での建築では、材料のリサイクル、在庫管理、建材の保護などによりムダを省くことができます。
引用:https://www.archdaily.com/949219/why-choose-modular-construction
コンテナ建築は、サステナブルか
そして、モジュール建築の中でも、海上輸送用コンテナをモジュールとして活用するコンテナ建築は、よりサステナブルであると言えます。
理由は、モジュールも再利用された海上輸送コンテナだから(※)です。
デンマーク・コペンハーゲンには、数千人もの学生が入居待ちをしているという学生寮があり、その寮はなんと海上輸送コンテナを再活用した低価格賃貸住宅です。
このスタートアップを経営する二人の起業家は、大企業や非営利団体で「持続可能性」をキーワードにした様々な事業に携わる中で、コペンハーゲンの都市化、そして学生用の廉価な住宅の不足問題に気づき、このビジネスを考えついたそうです。彼らはコンテナでプロトタイプの住宅を作るとともに、政治界にも働きかけて法改正まで実現させました。
これは、地域の社会課題の解決を目指すソーシャルベンチャーでありつつ、素晴らしいプロダクトを作り上げてビジネスを軌道に乗せ、さらにはサステナブルな建築工法を採用することで環境意識の高いデンマークの学生ユーザーのロイヤルティを高めるという、素晴らしい事例だと思います。
参考記事:入居待ち6500人!デンマーク発のコンテナ住宅が熱望される理由
改めて、モジュール建築、中でもコンテナ建築のサステナブル性(持続可能性)をまとめると、
①コンテナモジュール自体が再利用された製品である(※)
②工場生産のため、建築材料の無駄を減らせる
③解体が容易。解体後に移設して再利用ができる
となります。
コンテナを活用した建築が広まっていくことは、サステナブルな社会の実現に繋がっていくのです。
(※)現在日本で建築確認を取得しているコンテナハウスの多くは、日本の建築基準に適合させて新しく製造された建築用コンテナです。(建築用コンテナとは? 日本のコンテナ建築には、3つのアプローチがある)その意味では、日本国内における新築のコンテナ建築は、①の再利用製品ではありませんが、建てた後の移設・再利用は可能であること、また工場生産というモジュール建築の要素は備えており、やはりサステナブルな建築工法であると言えます。